「どうぶつのえさ」ももなかに包まれて自動販売機より産まれる
ほんだただよし『パパはこんなきもち。~こそだてたんか~』
ほんだただよしの第三歌集『パパはこんなきもち。~こそだてたんか~』(2017年)に収められた一首です。
自動販売機といえば飲み物というイメージがありますが、現在は飲み物だけではありません。アイスクリーム、お菓子、ラーメンなどの食べ物から、かばん、シャツなどの服飾関係などさまざまなものが売られています。
そして、掲出歌で登場するように「どうぶつのえさ」も自動販売機で売られているのです。場面は動物園か、それに類する動物広場みたいなところでしょう。
この歌には詞書がついています。
いつまでたっても、ヤギさんから離れようとはしなかった……。
もなかで包まれた「どうぶつのえさ」。子どもはえさをヤギにあげたのでしょう。
結句の「産まれる」にひと工夫が見られますが、動物の生命とかすかに呼応しているような表現だと思います。
歌集において、掲出歌には次の歌が続きます。
百円のえさの代わりに木の枝をやりだす息子を再びどかす
えさをあげ終わった後、もうあげるものがないので、子どもは「木の枝」を動物に与えはじめてしまったようです。
自動販売機というのは、お金を入れて、ボタンを押して、商品が出てくるという流れが一番の魅力なのではないでしょうか。自動販売機という閉ざされた空間から商品が出てきて、それを手に入れることができるという仕組みが、自動販売機でモノを買いたくなる要因なのかもしれません。
普段あまり目にしない、もなかに包まれた「どうぶつのえさ」であればなおさらのこと。子どもにとっては、自動販売機から「どうぶつのえさ」を手に入れる瞬間がもっともワクワクするのかもしれないと考えています。