自動販売機の歌 #3

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自動販売機の短歌

陰毛が生えてくるのが嫌だった そのころ自販機は110円
鈴木ちはね『予言』

鈴木ちはねの第一歌集予言(2020年)に収められた一首です。

自動販売機の缶ジュースは時代とともに値上げされています。2023年時点で、140円の缶ジュースや、180円のペットボトルを見かけるようになりました。

昔は自動販売機といえば100円というイメージがありましたが、消費税増税や原材料費高騰による影響で、段々と値段が高くなってきました。

掲出歌は110円の時代ですから、1992年から1998年の間の出来事でしょう。1992年に、自動販売機の缶ジュースの値段は100円から110円に値上げされており、1998年に120円にさらに値上げされています。

「陰毛が生えてくるのが嫌だった」というのがストレートな感情の表出ですが、それを自動販売機の缶ジュースの値段が110円の時代と結びつけているところに、この歌が単に個人の感情を述べただけに終わらない何かを感じます。

自動販売機の値段の変化というのは、大きな時代の変化というよりも、日常生活に密接した、非常に小さな時代感覚とでもいうべきものでしょうが、では時代性がないかというと決してそういうわけではなく、むしろ110円という具体的な数字によって、当時の時代感覚というのはより鮮明に表れてくるように思います。

「陰毛が生えてくる」のは、これまで生えていなかったところに毛が生えるという体の変化に対する拒否反応や、友人やクラスメイトの間で「もう生えたか、まだ生えていないか」といったやりとりに対する嫌悪といったものが表現されているように感じます。

陰毛が生えるという変化と、自動販売機の値段とが結びつけられることによって、過去に確かにあった感覚が手触りをもって読み手に伝わってきます。日本全国における値段の変化という広い範囲の視点から、個人の体の変化という狭い範囲の視点がうまく結びついた一首ではないでしょうか。

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