『中高生のための短歌のつくりかた 詠みたいあなたへ贈る40のヒント』鈴木英子

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中高生のための短歌のつくりかた 詠みたいあなたへ贈る40のヒント
質問者

これから短歌をつくりたいと思っているのだけれど、中学生でもわかる短歌の入門書はないかなあ?

短歌の入門書はいろいろありますが、どの年齢層に向けて書かれているかは本によって異なります。

大人に向けて書かれた本を、まだ漢字を習いたての小学生が読んでも取っつきにくい面があるでしょう。

今回紹介する鈴木英子の『中高生のための短歌のつくりかた 詠みたいあなたへ贈る40のヒント』は、本のタイトルにある通り、中学生・高校生に向けて書かれた一冊です。

また「詠みたいあなたへ贈る40のヒント」とあるように、短歌を”詠む”か”読む”のどちらに焦点が当たっているかといえば、これから短歌を「詠みたい」人向けに書かれています。

短歌の基本的なルールから、短歌を詠むときのポイントまで、40の項目が立てられているので、順番に学んでいくことができる構成となっています。

当書を読み終える頃には、一通り短歌に対する理解が深まっていることでしょう。そして、自分で短歌を詠む、つくることができるようになっているでしょう。

著者の歌集の歌を中心として、それぞれのヒント項目に合わせた歌が例として取り上げられているので、それぞれのポイントへの理解がしやすくなっています。

これから短歌を始めたいという中学生・高校生はもちろんですが、それ以外の人であっても短歌を詠みたい、つくりたいという人は、当書で短歌づくりのポイントを順番に理解していき、実際に短歌を詠んでみるきっかけの一冊としてはいかがでしょうか。

目次

当書のもくじ

まずは『中高生のための短歌のつくりかた 詠みたいあなたへ贈る40のヒント』のもくじを見てみましょう。

はじめに

本書の読み方

第1章 短歌の基本編(ルール)

  • ヒント1 短歌とは「あなた」です
  • ヒント2 短歌の歴史を知ろう
  • ヒント3 音数の数え方を知ろう
  • ヒント4 さまざまな韻律のパターンを知ろう
  • ヒント5 句切れを知ろう
  • ヒント6 歌のリズムに変化を与える「句またがり」を知ろう
  • ヒント7 より一層イメージがふくらむ「対句」の表現を知ろう
  • ヒント8 詩的な情緒をかもしだす「倒置法」を知ろう
  • ヒント9 印象が異なる「文語」と「口語」、それぞれの効用を知ろう
  • ヒント10 体言止めを有効に使ってみよう
  • ヒント11 新かなづかいと旧かなづかいの違いを知ろう

コラム1 新かなづかいと旧かなづかい、文語表現

第2章 実践編【コンクールに向けて】

  • ヒント12 素材集めをしよう
  • ヒント13 焦点を一点に絞ろう
  • ヒント14 着想から作品にするまでの流れを知ろう
  • ヒント15 テーマが与えられているときは
  • ヒント16 短歌づくりをより良くするためのコツを知ろう
    • [1] 友達を詠んだ短歌
    • [2] 家族(祖母)を詠んだ短歌
    • [3] 家族(母親)を詠んだ短歌
    • [4] 頼まれたおつかいでの出来事を詠んだ短歌
    • [5] 部活を詠んだ短歌
    • [6] 部活帰りの出来事を詠んだ短歌
    • [7] 自分が好きなことを詠んだ短歌
    • [8] ありのままの今の自分を詠んだ短歌
    • [9] 恋を詠んだ短歌
    • [10] コロナ禍での作者の学校での様子を詠んだ短歌
    • [11] 社会的な事件を詠んだ短歌
    • [12] ハロウィンの日の出来事を詠んだ短歌

コラム2 短歌・俳句・川柳の違い

第3章 上級編 表現力向上のヒント

  • ヒント17 読み手の関心を深める「取り合わせ」をうまく使おう
  • ヒント18 歌に心地よいリズムを与える「リフレイン」をうまく使おう
  • ヒント19 読み手に伝わる表現法を考えてみよう
  • ヒント20 特有のイメージが伝わる固有名詞を効果的に使おう
  • ヒント21 オノマトペ(擬音語)を上手に使おう
  • ヒント22 オノマトペ(擬態語)を上手に使おう
  • ヒント23 比喩を上手に使おう(明喩編)
  • ヒント24 比喩を上手に使おう(暗喩編)
  • ヒント25 ひとマス空けを効果的に使ってみよう
  • ヒント26 擬人法を有効に使ってみよう
  • ヒント27 感情ことばを入れてみよう
    • 〈悲しい気持ちを表現する〉
    • 〈嬉しい気持ちを表現する〉
    • 〈怒りの気持ちを表現する〉
    • 〈寂しい気持ちを表現する〉
  • ヒント28 イメージがふくらむことばや表現を探そう
  • ヒント29 「色」を取り入れて表現してみよう
  • ヒント30 五感を意識して取り入れてみよう
    • 〈視覚〉
    • 〈聴覚〉
    • 〈嗅覚〉
    • 〈味覚〉
    • 〈触覚(皮膚感覚)〉
  • ヒント31 有名な作品を引用してみよう
  • ヒント32 他人が言った一言をそのまま取り入れてみよう
  • ヒント33 他人の話を取り入れてみよう
  • ヒント34 つぶやきを詠み込んでみよう
  • ヒント35 数字を有効に使ってみよう

コラム3 主なカラーに付帯するイメージ一覧

第4章 上達するための楽しい習慣

  • ヒント36 名歌鑑賞をして感性、表現力を磨こう~監修者おすすめの歌人、短歌~
  • ヒント37 吟行に出かけよう
  • ヒント38 歌会に参加しよう
  • ヒント39 短歌日記を書こう
  • ヒント40 ジュニア短歌大会・コンクールに参加しよう

本書掲載作品の歌人のプロフィール

「はじめに」の冒頭で次のように書かれています。

短歌でなくても良いのです。

などと書いたらおかしいですよね。「詠みたいあなたへ」なのに。でも、私はそう思います。短歌でなくても良い。何かしてみたい、何か始めてみたいという、その気持ちが大切だからです。

短歌入門の本であるのに「短歌でなくても良い」といっているのはおかしなように思います。しかし、著者は、何かを始めるきっかけ、何かを始めるときの気持ちをより大切にしているのです。もちろん、短歌を始めてほしいという思いはあるでしょうが、嫌々始めるのではなく、本当にやりたいと思って始めてほしいと願っているのでしょう。

何かを始めることが大切で、それは短歌でない場合もあるでしょうが、短歌であればなおさらうれしいといったところでしょうか。

さて、当書は4章に分けて、40のヒントが例歌とともに取り上げられています。基本編、実践編、上級編と少しずつステップアップしていく構成になっています。

おすすめのポイント

それでは、当書の特長やおすすめのポイントを順番に見ていきます。

40ものヒントがテーマ別に書かれていてわかりやすい

当書はタイトルに「詠みたいあなたへ贈る40のヒント」とある通り、短歌を詠むためのヒントが40個取り上げられています。

第1章は基本編として、短歌のルール、句切れ、文語・口語、かなづかいなど基本的な事項が11個ピックアップされています。

続いて第2章は実践編として5つのヒントが、第3章は表現力向上のための上級編として19個のヒントが取り上げられています。最後の第4章は、歌会、吟行など短歌の習慣について5つのヒントが載っています。

詳しくはもくじを参照していただけるとわかりますが、これから短歌を始める人にとって疑問を抱くようなポイントが40個のヒントでわかりやすく、うまくカバーされていると思います。

どのヒントから読んでもいいのですが、ある程度関連事項がまとまっているので、ヒントを最初から順番に読むか、あるいは章単位でまとめて読むがおすすめです。

例歌に対する解説とチェックポイントが理解を深めるのに役立つ

それぞれのヒントには、例歌が引用されていますが、その歌に対する解説とチェックポイントがわかりやすく書かれているのも理解を深めるのにとても役立ちます。

引用歌があっても、その歌の背景や意味がわからなければ、該当ヒントに対する理解度も半減してしまいますが、わかりやすい解説とチェックポイントが理解を助けてくれるでしょう。

例えば「ヒント7 より一層イメージがふくらむ「対句」の表現を知ろう」では、与謝野晶子の歌が取り上げられています。

きさらぎの雨となるともきさらぎの雪となるとも寝てあり給へ (与謝野晶子『青海波せいがいは』)

これに対する解説では次のように述べられています(一部抜粋)。

二月(旧暦)は、(産後の肌立ちが悪く)雨の日も雪の日も(寒さに耐えながら)寝て過ごした。

またこの歌のチェックポイントとしては次の二点が取り上げられています。

  • イメージがふくらむ
  • 強い印象を与える

「雨」「雪」の対句、「きさらぎ」のリフレインに関連して、それぞれのポイントの説明が書かれており、こちらもヒントを理解する上で大切な役割を果たしていると思います。

他に例歌のピックアップについて触れておくと、「ヒント30 五感を意識して取り入れてみよう」の場合などは、五感のうちの二、三についてでなく、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の五感すべてについてひとつひとつ例歌が取り上げられています。このように詳細にかつ丁寧に書かれているところも、参考になる点として挙げておきたいと思います。

コンクールへの応募を意識したヒントが特徴

第2章は「実践編【コンクールに向けて】」という章名となっており、短歌コンクールへ応募することを意識した内容が集まっています。

例えばヒント14は「着想から作品にするまでの流れを知ろう」であり、どのような流れで短歌を詠んでいくのかが書かれています。何について詠むかを決めてから実際に短歌作品を完成させるまでの流れが、中学生の作品例を基に書かれているので、初めて短歌をつくる人でも、どのように詠んでいけばいいかがわかるようになっています。

そしてヒント16では、友達、家族、部活など12の対象について実際に中学生・高校生が詠んだ短歌の原作と添削例を基に、短歌をよりよくするためのコツが取り上げられています。

多くの場面が取り上げられているのも特徴です。

このようにコンクール応募作品を通して、コンクールへ応募する際のコツやポイントを学ぶことができるようになっています。

コラムの表がわかりやすい

コラムとして次の3つが掲載されています。

  • コラム1 新かなづかいと旧かなづかい、文語表現
  • コラム2 短歌・俳句・川柳の違い
  • コラム3 主なカラーに付帯するイメージ一覧

このコラムは簡潔にわかりやすくまとめられているので、意外にも便利だと感じます。

いずれも表として違いが明確に示されているので、これらの違いが曖昧になったときは、すぐにこのコラムに立ち返って表で理解することができるようになっています。

まとめ

『中高生のための短歌のつくりかた 詠みたいあなたへ贈る40のヒント』を読むと得られること

  • 短歌の基本ルールから上達の方法まで、テーマ別に40個のヒントがわかりやすく書かれていて読みやすい
  • 各ヒントにおける例歌に対する解説とチェックポイントが理解を深めるのに役立つ
  • コンクールへの応募を意識したヒントが具体的であり、さまざまな場面の例示により、応募の際のコツをつかみやすいように工夫されている
  • 章と章の間にあるコラムの表がわかりやすい

当書は、章や節が見開きでわかりやすく構成されているので、初めての人でも読みやすいつくりになっています。

それぞれのヒントは1から40まので番号がついていて、一度読んだところを再度振り返る場合でも、ぱっと開けるところもありがたいです。

タイトルにある通り、特にこれから短歌を始めようと思う中学生・高校生にとって一読してほしい一冊です。詠むためのヒントが満載ですので、自分で短歌を詠んでみたい、つくってみたいという人に適しているのではないでしょうか。

書籍・著者情報

書籍情報

著者鈴木 英子
発行メイツ出版
発売日2023年3月5日

著者プロフィール

1962年東京下町に生まれる。
中学時代、石川啄木を読み、短歌を作りたいと思うようになる。高校生になり、短歌添削教室に入会。新井貞子に出会い、以降師事。国学院大学在学中は「短歌研究会」に所属。
第一歌集『水薫る家族』を23歳で出版。やなせたかし氏責任編集の「詩とメルヘン」にて特集「若き歌人の日々」が組まれる。短歌(新井貞子、鈴木英子作品)にやなせ氏の絵を合わせての「燃える愛」展を開催。
2022年に16回を迎えた「全日本学生・ジュニア短歌大会」(日本歌人クラブ主催)には発足準備より関わり、選者として現在に至る。出張授業の依頼も多い。
歌集は以後、『淘汰の川』『鈴木英子集(『油月』所収)』『月光葬』。
日本歌人クラブ中央幹事、現代歌人協会会員、歌誌「こえ」(新井貞子創刊)代表。
(当書著者略歴より)

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