将棋の歌 #10

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将棋の短歌

将棋さしボナンザたけく負けたりな勝ちし竜王はあらき息なす
坂井修一『望楼の春』

坂井修一の第七歌集『望楼の春』(2009年)に収められた一首です。

ボナンザ(Bonanza)とは、日本人の物理化学者保木邦仁ほきくにひとが開発したコンピュータ将棋プログラムのことです。最初のver1.0は2005年に公開されました。

かつてコンピュータ将棋プログラムはプロ棋士に全く歯が立たず、ゲーム将棋の域を出ませんでした。しかし、AI(人工知能)やディープラーニング(深層学習)の普及、コンピュータの処理能力の飛躍的な向上などにより、年々徐々に力をつけていき、圧倒的処理能力により、2010年頃からプロ棋士を負かすまでに成長しました。

掲出歌は2007年に、ボナンザと渡辺明竜王との公開対局の出来事を詠んだ歌です。

結果は渡辺明竜王の勝ちとなりましたが、渡辺明竜王自身はボナンザの実力を「奨励会初段~三段」と評価しています。プロ棋士と呼ばれるのは四段からですが、2007年当時のボナンザは、プロ棋士になるための養成所である奨励会の三段程度の実力があるということです。

結句の「あらき息なす」に渡辺明竜王の闘い抜いた末の疲労感と安堵感とが感じられます。ボナンザを詠み込んだ短歌は珍しいでしょうが、この固有名詞があることで、時代を載せた歌として記憶に残る一首となっています。

2007年時点ではまだ人間の側に分がありましたが、人間対コンピュータの将棋対局はその後「将棋電王戦」というかたちで死闘が繰り広げられていくことになります。

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