〈ラーメン〉と赤地に白く染められた決定的な幟はためく
工藤吉生『世界で一番すばらしい俺』
工藤吉生の第一歌集『世界で一番すばらしい俺』(2020年)に収められた一首です。
ラーメンの幟はなぜあんなにも目立つのでしょうか。
大抵は、赤地に白文字か、白地に赤字、また赤、白、黒の組み合わせの幟が多いように思います。赤色は暖色で食欲推進の色ですし、白色は清潔感を想起でき、食品によく使われる色です。
掲出歌は、誰もが見たことのあるラーメン屋の幟を「決定的」と表現したところに面白さを感じます。
確かに、弱い色の組み合わせで遠慮がちに「ラーメン」と書かれているのと、赤と白のコントラストではっきりと目立つように書かれているのでは全然違います。
道路沿いなどで赤字の幟が立っていると、意識しなくても目に入ってくることがあります。ここにラーメンがあるぞ、と強い意思でアピールしてくる、そんな力強さを感じます。
まさに「決定的な幟」なのです。
ラーメン屋の味の評価はともかくとして、赤地に白文字の「ラーメン」を見るとラーメン屋に引き込まれてしまう力が幟にはあるのだと改めて気づかせてくれる一首です。