問題 – Question
〈夏真昼なべて影濃き地の上に訃報いくつを束ねて燃やす〉という巻頭歌で始まる、大下一真の第一歌集は何?
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解答 – Answer
『存在』
解説
『存在』は1988年(昭和63年)に出版された、大下一真の第一歌集です。16歳から37歳までの450首を収録しています。
歌集名の通り、本歌集を読むとどうしても「存在」について考えされられます。一首一首が生と死に通じる歌として感じられますが、それは著者が僧侶であるからというよりも、一人の人間として存在、生死、いのち、つながりといったものに真摯に向き合っているからだと思います。
この歌集には、家族を失うことと、家族が誕生することのどちらもが登場します。そこにあるのは人間に対する観念的な向き合い方ではなく、体感的で濃密な向き合い方であり、そのような歌々がとても印象に残ります。
『存在』から五首
穢土と呼ぶこの世の冬ぞ仰ぐとき無数の雪片天より下る
若き死も枯木朽ちゆくごとき死も見て来ぬ闇に尿を放つ
肩ぐるましてやらざりき別れ来てそのことばかり思いおるなり
定まらぬ首あやうきを抱きつつ無明どっぷりとわれは父たり
クレゾールかそかに匂えり僧形を脱ぎてけ寒き裸身をさらす