問題 – Question
〈朝明ふと兆すよしなきよろこびはひとを歩ませさびしがらせる〉という巻頭歌で始まる、島田幸典の第二歌集は何?
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解答 – Answer
『駅程』
解説
『駅程』は2015年(平成27年)に出版された、島田幸典の第二歌集です。2002年から十年間に発表された605首が収録されています。収録歌数としては多いほうです。
駅程とは、宿駅間の道のりを意味します。駅の歌が多く登場することから歌集名にしたと著者が述べています。
何気なく過ごしていると見過ごしてしまいそうな日常的な場面も、著者の手にかかれば生き生きとした場面に変わります。それは、ものごとの捉え方と動作ひとつひとつを丁寧に詠み込む術により成り立っているのだと感じます。
ものごとを認識する視点を新たに与えてくれる、そんな歌が数多く詠われています。短歌は何か劇的な場面を読む必要はなく、日常的な場面からでも魅力的な歌がいくらでも生まれることを教えてくれる一冊です。
『駅程』で寺山修司短歌賞、日本歌人クラブ賞、日本歌人クラブ近畿ブロック優良歌集賞受賞。
『駅程』から五首
古寺を去り古寺へゆく足を留めつ地図に載らざる雨は
昨ひと日家居せりしに明くる朝顔洗う手に髭は触りぬ
日の射せるなだりに眠る村のうえ村の十倍の白雲うごく
橡の枝にビニール絡み このひとも時代というをたわやすく言う
水底に漁りをせんと白鳥は首を沈めぬそのつけ根より