問題 – Question
〈意志表示せまり声なきこえを背にただ掌の中にマッチ擦るのみ〉という巻頭歌で始まる、岸上大作の第一歌集にして遺歌集となったのは何?
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解答 – Answer
『意志表示』
解説
『意志表示』は1961年(昭和36年)に出版された、岸上大作の遺歌集です(短歌および文章を含むため、正確には遺作集といえます)。
岸上大作は1960年(昭和35年)12月5日、遺稿「ぼくのためのノート」を遺し、21歳の若さで自ら命を絶ちました。したがって生前の歌集はなく、『意志表示』は死の翌年、友人たちの手により刊行されました。
岸上大作といえば、そのキーワードは「恋」と「革命」です。1960年代の安保闘争という時代背景のなか、思想と抒情が交錯する歌を遺しました。結果的には恋に破れてしまった岸上ですが、青春の最中だからこそ読める瑞々しい恋の歌も印象に残ります。
『意志表示』から五首
装甲車踏みつけて越す足裏の清しき論理に息つめている
海のこと言いてあがりし屋上に風に乱れる髪をみている
プラカード持ちしほてりを残す手に汝に伝えん受話器をつかむ
血と雨にワイシャツ濡れている無援ひとりへの愛うつくしくする
坂多き街に一日を吹きて来てすでに湿りを奪われし風