問題 – Question
〈少年のわが身熱をかなしむにあんずの花は夜も咲きをり〉という巻頭歌で始まる、高野公彦の第一歌集は何?
答えを表示する
解答 – Answer
『汽水の光』
解説
『汽水の光』は1976年(昭和51年)に出版された、高野公彦の第一歌集です。29歳から34歳までの作品377首が収められています。
巻頭歌もそうですが、本歌集は「夜」を詠んだ歌が多く見られます。登場する夜は真っ暗闇というよりは、どこか明るさを伴う夜であり、肯定的な美しさが心地よい読後感をもたらしてくれます。
また夜の黒いイメージとともに「白」という言葉が多く見られるのも特徴でしょう。〈白き霧ながるる夜の公園に自転車はほそきつばさ濡れたり〉は代表歌ですが、白と夜の融合により、美しい一首に仕上がっています。
著者があとがきで述べていますが、生まれ育った愛媛県喜多郡長浜町は海と河とが混じり合う河口にある町で、歌集名はそこからつけられました。
『汽水の光』から五首
性愛図見て幾夜さの夢にたつ土用荒波やひまはりの首
白き霧ながるる夜の草の園に自転車はほそきつばさ濡れたり
みどりごは泣きつつ目ざむひえびえと北半球にあさがほひらき
精霊ばつた草にのぼりて乾きたる乾坤を白き日がわたりをり
火酒なめて渇くこころよ妻も子もこゑ出づるなく眠れるほとり