問題 – Question
次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈生きるとは【 ① 】ことで午前二時すれ違う人のない道をゆく〉 (塚田千束)
A. 数える
B. 浮かべる
C. 見上げる
D. 任せる
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解答 – Answer
C. 見上げる
解説
生きるとは見上げることで午前二時すれ違う人のない道をゆく
掲出歌は、塚田千束の第一歌集『アスパラと潮騒』の一連「春の遺跡」に収められた一首です。
「生きる」ことの定義は、これまでさまざまになされてきたと思いますが、この歌では「生きるとは見上げること」と詠われています。
「午前二時」の暗い中、主体は外を歩いているのでしょう。仕事終わりかもしれませんし、あるいは何か用事があって外に出たのかもしれません。
すれ違う人のいない道は、夜中の暗さと相まって、より一層自分自身の存在を見つめる状況をつくりあげるのではないでしょうか。
夜空には星が輝いていたのかもしれません。主体は何気なく上を向いた可能性もありますし、何か意思をもって見上げたとも考えられます。どうしようもなく、気がついたら夜空を見上げていたのかもしれません。
そのとき、主体は感じたのでしょう。「生きるとは見上げること」だと。この「見上げる」は何かを暗示している言葉として表現されているとも捉えることができ、必ずしも上を向くという動作そのものを指しているとはいいきれませんが、下を向くのではなく「見上げる」と捉えているところに、正のベクトルを感じることができるのではないでしょうか。
正のベクトルよりであるとはいっても、希望や肯定だけでなく、わずかの諦念など、複雑な心境がないまぜになっているとも想像できます。
しかし、「生きるとは見上げること」に行き着いたこと、その力強さのようなものを素直に感じたい一首です。