次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈腐るまへの果物みたいにおいておくテーブルに二十日ほどこの【 ① 】を〉 (河野美砂子)
A. 本
B. 骨
C. 曲
D. 壜
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A. 本
腐るまへの果物みたいにおいておくテーブルに二十日ほどこの本を
掲出歌は、河野美砂子の第一歌集『無言歌』の一連「ほね」に収められた一首です。
買ってきた果物をすぐに食べずに、テーブルの上にしばらく置いておくということは少なからずあることでしょう。
熟すのを待っていることもあるでしょうし、買ってきたはいいけれど、家に帰ってくればあまり食べる気がしなくなって、何となくそのまま放置しているということもあるでしょう。
この歌は、テーブルに本を置いている状況をそんな果物の様子に重ね合わせて見ています。
読まずにしばらく置いておく本、いわゆる”積ん読”と呼ばれるものだと思いますが、本も果物と同じで、買ってきたはいいけれど、すぐにそれには手をつけないというものがあります。
何となく必要そうだから買ってきた、今買わないと後で手に入りそうにないから買ってきた本というものが多くの人にとってあるのではないでしょうか。そのような本は、買ってきてすぐ開くというより、一旦テーブルの上に置かれてしまいます。
それはまさに「腐るまへの果物みたい」に置かれた状況と酷似しているということでしょう。
本にしろ果物にしろ、”寝かせている”といい方向に捉えることもできますが、どちらかといえば、放置してそのままにしてしまっていたという印象が強いように感じます。
「二十日」も置いておけば、果たして「本」も腐敗臭のようなものに満ちてくるのかもしれないと、そんなふうにもふと思われてくる一首で興味深い歌ではないでしょうか。