次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈いまだ遠き希望のごとく店先の春の【 ① 】の名前見てゐつ〉 (横山未来子)
A. 子猫
B. 陽射し
C. 和菓子
D. 眼鏡
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C. 和菓子
いまだ遠き希望のごとく店先の春の和菓子の名前見てゐつ
掲出歌は、横山未来子の第三歌集『花の線画』の一連「日曜日」に収められた一首です。
「春の和菓子の名前」を「希望のごとく」見ている様子が、春という季節と相まって、あたたかで今後の期待感を膨らませるような印象があります。
春の和菓子の名前は具体的には詠われていません。桜や鶯といった春ならではの言葉が名前につけられているのでしょうか。ただ、ここで見ている春の和菓子の名前はどれか一つというよりも、和菓子屋に並べられたいくつかの和菓子の名前を見ているのではないでしょうか。そのどれもが春らしさを纏っており、これから始まる芽吹きを想像させてくれます。
「いまだ遠き希望」の「遠き」は、時間的に未来への遠さでもあるようですし、同時に過去への遠さでもあるように感じます。この希望は、かつてより主体が抱いている希望であるでしょうし、これから先に訪れることを願う希望でもあるのでしょう。
“希望のごとき”ではなく「希望のごとく」名前を見ているという点にも注目したいと思います。和菓子の名前が希望のようであると詠われているわけではなく、名前を見るという行為が希望のようであるということです。
ただ、この歌の場合、「ごとく」で一旦軽く切れているようにも読めますので、希望のように名前を見ているのはもちろん、それと同時に、春の和菓子の名前が希望そのものであるようにも感じられると思います。”希望のごとき”としてしまうと和菓子に直接かかってしまい、読みの膨らみが制限されてしまいますが、「希望のごとく」となっていることで、このような二重性をもった読み方ができるのではないかと感じます。
読んだ後、心が朗らかになる一首です。