問題 – Question
次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈畳まれた【 ① 】はたぶん比喩でしょう頑張れないまま死ぬことだとかの〉 (九螺ささら)
A. 帽子
B. タオル
C. 浮き輪
D. テント
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解答 – Answer
C. 浮き輪
解説
畳まれた浮き輪はたぶん比喩でしょう頑張れないまま死ぬことだとかの
掲出歌は、九螺ささらの第一歌集『ゆめのほとり鳥』の一連「春先の17ヘクトパスカルの気圧」に収められた一首です。
短歌において比喩が用いられることは多々ありますが、歌の中で「比喩でしょう」とそのままストレートにいう歌は珍しいかもしれません。
この歌では「畳まれた浮き輪」と「頑張れないまま死ぬことだとか」をつなげています。浮き輪は空気が入って膨らんだ状態でこそ、その力を発揮するわけで、押入れの奥に畳まれて眠った状態では、まるで「頑張れないまま死ぬこと」のようであると詠われています。
逆に見れば、空気の入った浮き輪は、頑張って生きた証ということでしょう。
結句「だとかの」といういい方が、断定を避け、「死ぬこと」への直接的な結びつきを和らげているようにも感じます。”死ぬことの”という表現よりも、少しぼかした感じがするのではないでしょうか。
「たぶん」という言葉の挿入もそうですが、「畳まれた浮き輪」と「頑張れないまま死ぬこと」が似ているでしょうと断定するのではなく、スタンスとしては「畳まれた浮き輪」に対するひとつの見方を提示しているといった感じでこの歌は表現されているのではないでしょうか。
言葉の微妙な取り扱いにも注目したい一首です。
ポチップ