次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈【 ① 】言い続け死ぬのならどのひとつとて受け売りじゃなく〉 (谷村はるか)
A. 格好いいこと
B. 恥ずかしいこと
C. 騒がしいこと
D. 役立たないこと
答えを表示する
B. 恥ずかしいこと
恥ずかしいこと言い続け死ぬのならどのひとつとて受け売りじゃなく
掲出歌は、谷村はるかの第一歌集『ドームの骨の隙間の空に』の一連「広島 2004-2006」に収められた一首です。
ある言葉を発するとき、「恥ずかしい」と感じるのは、発言したその場に他者がいるからでしょう。
その他者は、家族や恋人、友人のような親しい人の場合もあれば、職場における上司や同僚といった場合もありますし、あるいは偶々その場で遭遇しただけのあまり関わりのない人たちの場合もあるでしょう。
自分が「恥ずかしい」と感じなければ「恥ずかしいこと」にはならないわけですが、「恥ずかしい」と感じた途端に、発した言葉は「恥ずかしいこと」になるわけです。
「恥ずかしいこと」はできるだけいいたくないという人も多いかもしれませんが、人は他者との関わりの中で生きていくため、少なからず「恥ずかしいこと」をいいながら生きていかざるを得ないと思います。
この歌では「恥ずかしいこと言い続け死ぬのなら」とある通り、主体は、生きていく上で「恥ずかしいこと」を発することを受け入れているでしょう。見方を変えれば、生きるということは「恥ずかしいこと」を発しながら日々を送るということなのかもしれません。
下句では「受け売りじゃなく」と展開していくわけですが、どうせ「恥ずかしいこと」をいうのなら、ありきたりの言葉ではなく、まだ誰も発したことがないようなオリジナルな言葉を希求している姿が見られます。
「受け売り」というのは、自分で考える手間を減らすことができ、使い勝手がよいものでしょう。しかし、主体は、受け売りの言葉を使うことには面白さがないと感じているのではないでしょうか。
受け売りではない「恥ずかしいこと」、それを死ぬまでにどれだけいえるのかどうか、そこにその人自身の充実度のようなものがあるのではないかと感じられる一首です。