問題 – Question
次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈月末の終業時間のオフィスに【 ① 】のような拍手が上がる〉 (ユキノ進)
A. 小雨
B. 花火
C. ノイズ
D. 寝息
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解答 – Answer
A. 小雨
解説
月末の終業時間のオフィスに小雨のような拍手が上がる
掲出歌は、ユキノ進の第一歌集『冒険者たち』の一連「会社員たち」に収められた一首です。
この一連の前後の歌から推測すると、派遣職員の派遣契約が打ち切りとなり、その人を送り出す場面のようです。
月末のこの日が、その派遣職員にとって勤務最終日なのでしょう。夕方の終業時間となって同じ課のメンバーが席を立って、集まります。掲出歌の次の歌には、五、六人とあります。
そのとき、今日までお疲れさまでしたの意味で、拍手が起こったのでしょう。五、六人であるため、盛大な拍手というのではありません。また、派遣契約終了という、喜ばしいことではなく、どちらかといえば寂しいことですので、盛大な拍手というのも合わないでしょう。
そのような拍手を「小雨のような」と喩えています。大雨ではなく小雨。そして、雨というのも、この寂しさに少し関与している言葉の選択でしょう。
月末の忙しい時間帯にこのひとときは設けられたわけですが、中には心から送り出そうという気持ちをもった人は少なかったかもしれません。どちらかといえば形式上集まって、形式上拍手をし、形式上ありがとうという、そんな時間だったようにも想像できます。
「小雨のような拍手」は拍手でありながら、本来の意味合いの拍手ではない、そんな感じが伝わってくる一首ではないでしょうか。