問題 – Question
〈色あせた木馬の鞍にふれるとき少年少女瞑りいるべし〉という巻頭歌で始まる、笠木拓の第一歌集は何?
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解答 – Answer
『はるかカーテンコールまで』
解説
『はるかカーテンコールまで』は2019年(令和元年)に出版された、笠木拓の第一歌集です。2009年(平成21年)から2019年(令和元年)までの作品343首が収められています。
事物や物事、対象を丁寧に見つめながら、丁寧に詠われている歌が多く、印象に残ります。
そこから生まれる世界は、どこか寂しさを湛えているようでもありますが、決して後ろ向きというわけではないように思います。
現実をしっかりと見つめることで、その奥にある何かを見ようとする眼を感じます。現実を嘆くのではなく、現実を現実として捉え、そこから次のステージを見つめているようです。表面的ではないからこそ、何度でもその歌の世界に、読み手は奥行きを確かめることができるのではないでしょうか。
雨、傘、光、花といった対象が繰り返し詠われていますが、これらが繰り返し登場することで、一首のみからでは構築できない、本歌集全体の世界をつくりあげているように感じます。
『はるかカーテンコールまで』から五首
もう冬の雨だよ窓の向こうにはりっしんべんの降下止まざり
ふたすじの線を水面に曳きながら鴨はゆくなりまず胸がゆく
声 光 水 噴き上がり、かつて夏だったことなど一度もないよ
親指ほどの影が舗道をすべりゆきある花びらの着地に出会う
カクテルにささる果物ばかみたい、でも親友と呼びたかったよ