〈たとえれば澱粉のみで成りたった巨体のようなアメリカならむ〉という巻頭歌で始まる、生沼義朗の第二歌集は何?
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『関係について』
『関係について』は2012年(平成24年)に出版された、生沼義朗の第二歌集です。2002年(平成14年)から2009年(平成21年)までの作品411首が収録されています。
歌集名にあるとおり、他者との「関係」について思考を深めた歌が印象に残ります。
「関係」という語を使って、関係をダイレクトに詠んだ歌をいくつか引いてみましょう。
体毛のうすきふたりが抱きあえば関係はしばし水のごとしも
恋愛にはるかに遠き関係として呼び出されたること多し
酢味噌和えにて独活を喰う 関係は簡略化するべきか、あるいは
関係をひとつ見送る日曜に一回性の雨は降りおり
関係を成立させるむつかしさゆえに発語のくるしき日あり
「関係」に対しての距離感を測る主体の姿が見えてくるようです。
歌集全体を通しては、仕事に関わる歌が多く見られ、さらには家族や友人との関係などへの歌へと展開している印象があります。
また、四字熟語や慣用句などを取り入れた歌、あるいは言葉の漢字そのものの意味について着目した歌がいくつか見られ、著者における言葉そのものへの興味を強く感じます。
物を見つめる眼の確かさとともに、同じように自分自身を見つめる眼も確かであり、そのような歌に特に惹かれる一冊です。
『関係について』から五首
「ラストコール! だけどパネルは変わらない」そんな一日を終えて帰り来
選挙速報見ては気づけり万歳は背広のかたちが崩れることに
お互いの理解の端緒に立つための二時間あまりは会話にあらず
他者と時間をシェアすることのむずかしさ、鶏の脂はすぐ凝りおり
日の丸に寄せ書きありぬ大方は白いところに書きたがりおり