短歌クイズ Q.427

当ページのリンクには広告が含まれています。
短歌クイズ
問題 – Question

〈名を呼べばふりむく躯呼ばるるとふことそのものの歓びに満ち〉という巻頭歌で始まる、矢部雅之の第一歌集は何?

答えを表示する
解答 – Answer

 『友達ニ出会フノハ良イ事』

解説

『友達ニ出会フノハ良イ事』は2003年(平成15年)に出版された、矢部雅之の第一歌集です。

本歌集は大きく三つの章に分かれています。Ⅰはさまざまな範囲が詠われていますが、食、酒、恋愛、家族といった題材の歌が印象に残ります。Ⅱは歌集名ともなった「友達ニ出会フノハ良イ事」という題でアフガニスタンへ取材にいったときの歌が、写真および文章とともに載せられており、意欲的な作品となっています。Ⅲは「挽歌」と題して、知り合いに寄せる思いが列車の車内の情景と交叉しながら描かれています。

プロの報道カメラマンとして多くの現場に向かう著者ですが、その立場からしか見ることができないもの、その立場だからこそ見ることができるものが短歌として詠われているように思います。

そういう点では、Ⅱの「友達ニ出会フノハ良イ事」が著者ならでは視点によって詠い出された歌の数々なのではないでしょうか。Ⅱは短歌一首または数種と写真と文章という組み合わせでページが構成されていて、短歌だけを味わう作品とはまた別物である印象もありますが、現地を取材した現場感のようなものは、この構成によってより強まって伝わってくるように感じます。

Ⅲは「挽歌 二〇〇〇年九月一日 京浜東北線大宮行き車内にて」という題で、その四年前に亡くなった仕事上の知り合いについて思いを馳せる連作です。こちらも短歌だけでなく、経緯を表す文章が間に挟まれている構成となっています。展開の先が気になり、一気に読ませる一連だと思います。

いわゆる一般的な歌集とは異なるつくりですが、そこがこの歌集の特徴であると思います。もちろん一首一首の魅力も存在感も感じられますし、始めから終わりまでを通して印象に残る一冊です。

2004年(平成16年)、本歌集にて第10回日本歌人クラブ新人賞、第48回現代歌人協会賞受賞。

『友達ニ出会フノハ良イ事』から五首

「現場に居たら止めてた?」などと聞いて来る友のあり たぶん撮つたよ俺も

舌に残る白魚の身の青くささなほ青くさき俺でありたし

一度しか言はぬよく聞けこの俺は秋刀魚が好きだお前が好きだ

ひるがへりひるがへりして鳩の群青き屋根より青き空へと

単純に生き単純に死ぬなどは虚辞なれどこの墓の単純

♪ みなさまの応援が励みになります ♪


俳句・短歌ランキング

ブログランキング・にほんブログ村へ

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次