問題 – Question
次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈菜箸をさし入れ左右にほぐしたし本日の【 ① 】かたまりやすく〉 (佐藤モニカ)
A. 脳
B. 雲
C. 声
D. 歌
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解答 – Answer
B. 雲
解説
菜箸をさし入れ左右にほぐしたし本日の雲かたまりやすく
掲出歌は、佐藤モニカの第一歌集『夏の領域』の一連「白馬」に収められた一首です。
曇天でしょうか。
この日の空には、巻雲のような薄い雲ではなく、層雲や積雲といった割と低い位置に発生する雲があふれている様子が浮かんできます。
「菜箸をさし入れ」という発想がとても面白いと思います。なかなか雲を見て菜箸でほぐしたいという発想は出てこないのではないでしょうか。
菜箸が登場することで、まるで卵料理をするときのようなイメージが浮かびます。かたまりやすい雲をほぐしたいという想像が楽しい歌です。
曇天であっても、気持ちまで沈める必要はなく、この歌のような発想をもって空を見上げれば、その一日はとても愉快で充実した日になるのではないでしょうか。
短歌のもつ効果として、このような視点を読み手に与えてくれることがひとつあるでしょう。この一首を知る前と知った後では、雲を見つめる目が違ってきます。
今まではただの曇天としか見ていなかった空が、今後空を見上げるときには新たな視点で見ることができるのです。
それは些細な視点の変化かもしれませんが、そのわずかな変化の繰り返しが人生を豊かにしてくれる、そのことに改めて気づかせてくれる一首ではないでしょうか。