次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈【 ① 】の回数少なき生徒なれば二十年経ても名前忘れず〉 (川本千栄)
A. 発言
B. 病欠
C. まばたき
D. あいさつ
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C. まばたき
まばたきの回数少なき生徒なれば二十年経ても名前忘れず
掲出歌は、川本千栄の第三歌集『樹雨降る』の一連「あ、河童馬丁」に収められた一首です。
生徒に対する先生の立場として詠まれた歌でしょう。
生徒にとって先生は、小学校から高校まで通ったとしても思い出すことができるほどの数で収まります。一方、先生にとって関わった生徒の数は、長年勤めれば勤めるほど、全員の名前をすべては思い出せないくらい多くの人数になっていくでしょう。
その中で、思い出す生徒、忘れない生徒とは一体どのような生徒なのでしょうか。
この歌では「まばたきの回数少なき生徒」がピックアップされています。まばたきの回数が多いか少ないかに注目することは、生徒をよく観察しないとできないことではないでしょうか。
まばたきの回数が少ないというのは、じっと先生を見つめていたということかもしれません。先生と生徒とが視線の合うことが多かったと想像することができます。生徒が授業を熱心に受けていたともとれますし、あるいは先生に対する興味関心があり、じっと見つめていたともとれるでしょう。
いずれにしても、まばがきの回数が少ないという点において、この生徒は記憶されることになるのです。勉強がよくできた、運動がよくできた、ではないのです。まばたきの回数が少なかったからこそ記憶されるというところに、この歌が歌として立ち上がってくるのを感じます。
二十年経ってもその生徒の名前を忘れずにいる、それほどこの生徒に対する印象が作者には強く刻まれているのでしょう。
まばたきという一瞬の動きが、二十年という歳月と対比されるとき、この一首は大変面白く感じられるのです。