問題 – Question
〈JR線路脇には赤い芥子普通列車の緑を透かす〉という巻頭歌で始まる、川本千栄の第三歌集は何?
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解答 – Answer
『樹雨降る』
解説
『樹雨降る』は2015年(平成27年)に出版された、川本千栄の第三歌集です。2008年(平成20年)4月から2014年(平成26年)までの484首を収録しています。
あとがきによると、著者の子どもが2008年に小学校に入学し、2014年に小学校を卒業しています。
本歌集は、家族の歌、子育ての歌、自身の病気の歌、短歌の師である河野裕子を詠った歌などが中心となっています。
特に子どもとの関係を詠った歌が印象に残ります。決して近づきすぎず、かといって遠すぎず、著者と子との関係は適度な距離が保たれながら詠われています。親と子という関係ではありますが、むしろひとりの人間とひとりの人間との関係性において詠われているように感じます。
その冷静な目によって詠われた歌の数々に、著者と子の信頼関係のようなものが浮かび上がってきているのではないでしょうか。
本歌集にて、第59回関西短歌文学賞(A部門)受賞。
『樹雨降る』から五首
ウルトラマンは着ぐるみなんだと夫は子に告げてしまえりわが病中に
右手だけぐうんと長く描かれて子は絵日記に兎撫でいる
球根にわれはなりたしミュシャの絵の女のように首をそらして
川本千栄と縦書きにしてつくづくと真っ直ぐ寂しい名前と思う
ラジコンカー有害ごみに廃棄して終われりわが子の子供時代は