問題 – Question
次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈ゆるやかに父が【 ① 】から老いていくかつてはわれを打ち据えた【 ① 】〉
A. 眉
B. 喉
C. 肘
D. 骨
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解答 – Answer
A. 眉
解説
ゆるやかに父が眉から老いていくかつてはわれを打ち据えた眉
掲出歌は、虫武一俊の第一歌集『羽虫群』の連作「遠く離れて」に収められた一首です。
老いるとき、人はどこの部分から老いていくのでしょうか。
髪の毛、顔、手の皺、姿勢など、老いたなあと最初に感じる部分はさまざまあると思います。
掲出歌では「眉から老いていく」と詠われています。眉の毛の色が白くなっていって気づいたのでしょうか、あるいは眉の角度がだんだんと垂れさがっていってそう感じたのでしょうか。
急に老いたわけではなく「ゆるやかに」その変化は訪れているのです。
ただ、老いを「眉」に感じたところがこの歌のポイントであり、独特な雰囲気を出しています。
「かつてはわれを打ち据えた眉」とあるように、父の眉は主体にとって特別なパーツだったのでしょう。”打ち据える”とは”ひどく叩く”という意味もありますが、”いい負かす”や”やりこめる”といった意味ももっています。
いずれの意味においても、「眉」と「打ち据えた」のつながりに若干のひっかかりを覚えます。どちらかといえば、手、足、鞭、口などという言葉の方が「打ち据えた」の意味には合う言葉でしょう。
けれども「眉」と「打ち据えた」との組み合わせがこの一首を一首たらしめているともいえます。父の眉は、手足や口以上に強烈な存在としてあったのでしょう。
かつての力強さを少しずつ失いつつある眉の様子を見ている主体の、若干の寂しさが滲み出ているように感じ、印象に残る一首です。
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