次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈【 ① 】の広さすなわちこの部屋の広さ どこに何を置こうが〉 (松村正直)
A. リビング
B. 天井
C. 窓枠
D. 夕光
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B. 天井
天井の広さすなわちこの部屋の広さ どこに何を置こうが
掲出歌は、松村正直の第一歌集『駅へ』の連作「グランメール春日201号」に収められた一首です。
部屋の広さを表現するとき、どのような表現方法があるでしょうか。
畳で表せば四畳半、六畳など、平方メートルで表せば30㎡などではないでしょうか。また部屋数に注目すれば、1R、2DKや3LDKといった表し方もあります。
さて掲出歌ですが、「天井の広さ」を「部屋の広さ」と表しています。いわれてみれば確かに天井の面積と床の面積はほぼ同じになるのですが、このようにいわれるまでなかなか気づかない視点ではないでしょうか。
寝転んで見上げる天井には何も置かれていません。一方、床には生活に必要な色々なものが置かれているでしょう。あるいはこれから配置していくのでしょう。それらのものをどのように配置したとしても、決められた部屋の広さは変わることなく、すなわちその大きさは「天井の広さ」と同じなのです。
主体の感じている思いは一体何なのでしょうか。わずかな寂しさのようなものも感じますが、それだけではないでしょう。むしろ部屋の広さに注目してしまうこと、それも天井の広さが部屋の広さだと認識してしまうこと、それ自体がこの歌に、決して楽しいとはいえない、けれども寂しいともいえない何ともいえない感情を与えているように思います。
「どこに何を置こうが」に諦念に近いものも感じますが、一方でこの部屋にいる自分自身を受け入れている主体の心のさまも見えてくるようです。
ある種発見の歌だとは思いますが、それ以上に主体はどういう思いで天井の広さを思っているのか、そればかりを何度も考えてしまう、とても印象深い一首だと感じます。