問題 – Question
次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈春の夜の音楽室に【 ① 】のような無数の譜面台あり〉 (小島なお)
A. 昆虫
B. 留鳥
C. ウイルス
D. 巻貝
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解答 – Answer
A. 昆虫
解説
春の夜の音楽室に昆虫のような無数の譜面台あり
掲出歌は、小島なおの第一歌集『乱反射』の連作「目の奥の空」に収められた一首です。
夜が深み静寂に包まれた音楽室に、人の姿はありません。その音楽室を想像するとき、そこには「無数の譜面台」が浮かんでくるのです。
現実的な話では、譜面台は「無数」ではなく、音楽室に入りきるだけの有数ということになりますが、想像においては「無数」となり得ます。しかもその譜面台は「昆虫のような」譜面台なのです。
譜面台の独特のかたちを昆虫になぞらえることで、ひとつひとつの譜面台が命をもち、いまにも動きだしそうな、そんな様子が感じられます。「春の夜」という季節と時間がなおさら雰囲気を醸し出しており、夜のくらがりだからこそ、「昆虫のような」という比喩が活きてくるように思います。
夜の音楽室に、いわゆる音楽は流れていないでしょう。しかし「昆虫のような」譜面台が無数にある空間からは、命の息吹のような音が生まれているのかもしれません。
それは人の姿が見えない春の夜の音楽室だけに生まれる音であり、ひとたび人が近づけば聞こえなくなってしまう、そんな幻の音の世界が展開されているような一首だと感じます。
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