問題 – Question
次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈北極で【 ① 】を失ふのと同じ 話すことなくて微笑んでゐる〉 (魚村晋太郎)
A. 夜
B. 星
C. 声
D. 北
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解答 – Answer
D. 北
解説
北極で北を失ふのと同じ 話すことなくて微笑んでゐる
掲出歌は、魚村晋太郎の第一歌集『銀耳』の連作「空席」に収められた一首です。
誰かと同じ空間にいて、話すことがなくなったとき、人はどのような態度をとるでしょうか。この歌では話すことがなく「微笑んでゐる」姿が描かれています。
その「微笑んでゐる」姿は、上句で「北極で北を失ふのと同じ」と喩えられています。
ここでいう「北極」は北極のある程度の広範囲をいうのか、それとも北極点を指しているのか定かではありませんが、北の極地において失いようのない、また失ってはならない「北」を失うということは、どうしようもない事態であることが伝わってきます。
北極で北を失うのは道を失うのと同じであり、その存在自体を危ぶませるものであるでしょう。
上句の如何ともしがたい状況が提示されることで、主体と相手との空間のどうしようもなさがより強調されているでしょう。微笑むことしかできない事態はいつ終わるとも知れず、このまま微笑んでいる状況はずっと続いていくのではないかと思わせる、ある種の怖さのようなものも感じます。
北極の極みと寒さのイメージが、主体の背後に間違いなく浸み込んできている一首です。
ポチップ