問題 – Question
〈一九五八年にぼくは生まれこの十月に死ぬはずだった〉という巻頭歌で始まる、染野太朗の第一歌集は何?
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解答 – Answer
『あの日の海』
解説
『あの日の海』は2011年(平成23年)に出版された、染野太朗の第一歌集です。
学校の教員である著者ですが、学校、先生、生徒らとの関係を詠った歌が本歌集のひとつの柱となっているでしょう。ただ単に学校生活を詠うというのではなく、あくまでも学校は背景であり、そこを通した著者の思いこそが歌の背骨であります。
その眼差しは時にやさしく、時に厳しく、時に鋭く、対象を見つめています。
また家族や自分自身を詠った歌も多く、こちらも本歌集の主要な部分を占めているでしょう。
日常を詠っているのですが、それは日記でも報告でもなく、それぞれの歌から奥にある感情を感じるようであり、内面に迫っていくさまが印象に残ります。
そしてそれらの感情は、具体物によって補強されているでしょう。一首一首に具体的な物やイメージが付加されることによって、奥にある感情はより鮮明に読み手に伝わってくるように感じます。
どこか苦しさを感じる歌も少なからずありますが、それらも含め、生きるということを考えさせられる一冊だと思います。
『あの日の海』から五首
肺胞に届けばやがて雪よりもしろい根を張るチョークの粉か
カーテンに春のひかりの添う朝はじめて見たり君の歯みがき
タンポポの背が伸びるころ君よりも君を知るのだ狭い新居で
パキシルに統べられぼくの脳にもセロトニン舞うゆあーんゆよーん
生徒らのマンボウの眼よ担任が壇に上げられ紹介さるる