問題 – Question
次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈バスツアーに息子の席を買ってやり子は【 ① 】の存在となる〉 (奥村知世)
A. 遠景
B. ひとたり
C. 有料
D. 春光
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解答 – Answer
C. 有料
解説
バスツアーに息子の席を買ってやり子は有料の存在となる
掲出歌は、奥村知世の第一歌集『工場』の連作「猫飼う予定」に収められた一首です。
公共交通機関の運賃やテーマパークの入場料など、子どもが幼児の場合は無料であることが多いでしょう。しかし子が6歳以上となったり、小学生になったりすると、今まで無料だった料金も有料に変わります。
掲出歌は「息子」が成長し、子自体にバスツアーの料金がかかる年齢に達した場面を詠っています。
「有料の存在」という表現に工夫が見られ、このようにいわれると子の存在が急にくっきりとした存在として読み手に伝わってくるように思います。
無料であろうが有料であろうが、子そのものがなにか急に変化するわけではありませんが、無料・有料という区分けによって、子への捉え方が変化しているでしょう。親の側から見た子は、無料から有料へ移った段階であきらかにステージが一段上がったのです。
うれしいとかかなしいとかいった感情を入れずに「有料の存在」という言葉のみで捉えたところにこの歌の魅力があり、金銭面という外側の情報から子の輪郭を際立たせている一首だと感じます。