問題 – Question
次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈【 ① 】を小さき闇にさし入れて君の見えない部分を探る〉 (俵万智)
A. 舌先
B. 綿棒
C. 苛立ち
D. 薔薇の香
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解答 – Answer
B. 綿棒
解説
綿棒を小さき闇にさし入れて君の見えない部分を探る
掲出歌は、俵万智の第三歌集『チョコレート革命』の連作「ぬるきミルク」に収められた一首です。
綿棒を差し入れる体の部分はどこでしょうか。まず思い浮かぶのは耳ですが、他にも鼻や指の間などがあるでしょう。あるいは他の部分かもしれません。
一応、耳という想定で読みたいと思いますが、耳の中の空間を「小さき闇」と表現したところが丁寧であり、的確だと感じます。
「君」を知るには、まず目に見える部分や表面的に触れることができる部分から始まっていくのでしょう。しかし「君」をもっと知るには、見えない部分に触れていく必要があります。「見えない部分を探る」という表現には、君をもっと知りたいという主体の欲求が表れているでしょう。
観念的になりすぎないのは「綿棒」という具体物の提示であり、そこから「見えない部分」への展開のバランスがちょうどよく、読み手に寄り添い過ぎず、かといって突き放し過ぎずといった印象を受けます。
綿棒ひとつで広がる世界があることを、この歌は教えてくれるように思います。