問題 – Question
〈港湾のゆらめきやまぬかがやきに鳥落つるまでたたずむひとり〉という巻頭歌で始まる、大辻隆弘の第一歌集は何?
A. 『水廊』
B. 『ルーノ』
C. 『抱擁韻』
D. 『デプス』
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解答 – Answer
A. 『水廊』
解説
『水廊』は1989年(平成元年)に出版された、大辻隆弘の第一歌集です。1985年から1988年までの著者二十代の歌が収められています。タイトルに「水」という言葉がある通り、水や雨に関わる言葉や描写が選ばれた歌が印象的で、修辞に優れた歌の数々は読むほどに魅力の増していく一冊です。
著者は、1989年三重県文学新人賞を受賞しました。
『水廊』より五首
雪が雨にかはる夕べは傷ついた緑の犀のねむりをぼくに
ゼフュロスは雨をたづさへ街路樹とわれらを濡らす、別れを言はう
青銅のトルソのやうな君を置くうつつの右にゆめのひだりに
体内に海抱くことのさびしさのたとへばランゲルハンス島といふ島
安息の日はオリーヴの湯に沈むはなやぐ生を午後に継ぐべく
(選択肢の補足)
B.『ルーノ』は第二歌集、C.『抱擁韻』は第三歌集、D.『デプス』は第四歌集。