次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈懸案どれも半透明のぐちやぐちやに【 ① 】に似て週終る〉 (荻原裕幸)
A. ビニール傘
B. 夕の霙
C. 大根おろし
D. 袖口のボタン
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C. 大根おろし
懸案どれも半透明のぐちやぐちやに大根おろしに似て週終る
掲出歌は、荻原裕幸の第七歌集『永遠よりも少し短い日常』の連作「いもうとが鳴る」に収められた一首です。
「懸案」とはまだ解決されていない事項を指しますが、仕事の場面かもしれません。
いわゆる積み残した作業ですが、これは自分ひとりのせいばかりではなく、周りの影響の場合もあるでしょう。自分の場合は、単純に作業する時間が足りなかったり、気が進まず後回しになってしまったりするケースがあります。
また周囲との関係でいえば、やりとりがスムーズに進まなかったり、決裁が下りなかったり、完結させるには一定の時間を要する場合があるのではないでしょうか。
「どれも」とありますから、そんな懸案事項はひとつではないようです。いずれもが完了せず中途半端な状態で懸案として残ってしまっているのです。それを「半透明のぐちやぐちや」である「大根おろし」に喩えた一首です。
ぐちゃぐちゃなまま今週が終わってしまったところには、今秋片付けてしまいたかったという思いとともに、懸案はあるけれどもとりあえず一週間が終わったという安堵感が同時に感じられます。
救いなのは「半透明」であることです。
「半透明」はつかみどころがない、解決策がまったく見えないというようにも取れなくはありませんが、どちらかといえば透き通っていて、訳が分からないような状態ではないというふうに好意的に受け取りました。
紅葉おろしのような混ざり方では、よりぐちゃぐちゃ感が出てしまいますが、大根おろし一色であるところに、懸案ながらもわずかに整理されたままの状態が読み取れます。
「懸案」と「大根おろし」を重ねたところが独自の視点で、とても面白く感じた一首です。