問題 – Question
〈世界史の教科書はラインマーカーと頰杖と仲良くなってゆく〉という巻頭歌で始まる、千葉聡の第五歌集は何?
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解答 – Answer
『海、悲歌、夏の雫など』
解説
『海、悲歌、夏の雫など』は2015年(平成27年)に出版された、千葉聡の第五歌集です。2014年の作品を中心に208首が収録されています。
高校教諭である著者ですが、横浜市立桜丘高校に勤務していた時期の日々が詠われています。
ドリブルがやんだ瞬間、海風の悲歌か何かが聞こえたような
副顧問だから相談にのったりする 悩みが夏の雫になるまで
歌集のタイトルはこれらの歌から採られたものでしょう。本歌集に詠まれている季節は夏が中心で、海を詠んだ歌も数多く登場します。
特に授業のことや、バスケ部のこと、学校における短歌のことなど、高校での出来事が実感を伴って読み手に伝わってきます。
バスケ部のことは繰り返し何度も詠まれており、読んでいて胸が熱くなります。
高校教諭という立場と、教え子である高校生の青春の日々が関係性をもって展開されていき、この一冊はひとつの記録であり、物語のように進んでいきます。
また家族を詠んだ歌、短歌に向き合う自分を詠んだ歌などもあり、学校生活だけでなく、展開する世界に厚みが増している一冊だと思います。
書肆侃侃房「現代歌人シリーズ」の第一作。
『海、悲歌、夏の雫など』から五首
放課後の廊下は夕陽に染められて、染められはしない隅っこを愛す
フリースロー一本外し二本目は祈り(やその他)のぶん重くなる
空色の切手を貼ろう遠い遠い知らない町までひとすじに飛べ
会いたくて会えない人がいることを兄は手帳の最後に書いた
新しい汗は以前の汗を追い暴れる 部員とやるシャトルラン