問題 – Question
次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈くちびるの縁から逸れた錠剤は【 ① 】になったということにする〉 (伊波真人)
A. 風
B. 星
C. 父
D. 花
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解答 – Answer
B. 星
解説
くちびるの縁から逸れた錠剤は星になったということにする
掲出歌は、伊波真人の第一歌集『ナイトフライト』の連作「ナイトフライト」に収められた一首です。
錠剤というものは、飲むのに慣れた人であればこぼさずにきれいに飲むことができるでしょうが、たまにしか飲まない人にとっては飲みにくいしろものです。
この歌は「くちびるの縁から逸れた錠剤」に焦点を当てています。
何も意識することがなければ、くちびるからこぼれた錠剤は、ただのこぼれた錠剤ですが、作者はこぼれた錠剤を「星」と捉えることで、詩を生み出しています。
きれいすぎるといえば、きれいすぎる歌かもしれませんが、これくらいの表現の方がかえって読み手の心を揺らすことができるのかもしれません。
「なったということにする」という言い聞かせのような言葉も効果的で、他の人がどう思おうと、自分自身は「星になった」ということにするんだという、芯のある捉え方だと感じます。
日常において錠剤を飲むという何気ない場面にも、短歌が生まれる要素は多分にあることを教えてくれる一首です。