問題 – Question
次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈死に際の一瞬にだけ心臓は【 ① 】と同期を果たすらしいね〉 (山田航)
A. 海
B. 過去
C. 歌
D. 笛
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解答 – Answer
A. 海
解説
死に際の一瞬にだけ心臓は海と同期を果たすらしいね
掲出歌は、山田航の第三歌集『寂しさでしか殺せない最強のうさぎ』の連作「一緒に住もうか」に収められた一首です。
人間は死後、一体どこに還っていくのでしょうか。
土に還るという人もいれば、空に還るという人もいるでしょう。死後に還る場所をここだと決めている人もいれば、何となくでしか想像していない人もいるでしょう。
掲出歌では、死と海のイメージが関連付けられています。
死に際の心臓の動きが「海と同期を果たす」と詠われているのです。「同期を果たす」という言葉によって、心臓と海がリンクし、ひとつの個体である人間が、海の広大さへと拓けていくような印象を与えてくれます。
しかし同期するのは死に際の一瞬だけなのです。心臓が海と同期すると同時に、この心臓は止まってしまうのかもしれません。我々の知る世界で心臓が止まったとしても、海と同期を果たした心臓はその後、我々の知らない世界で躍動していくのかもしれません。
本当のところは死に際にならないとわからないのですが、生きている人間にとってこの歌は、死に際を豊かに想像させてくれる魅力ある一首だと感じます。