問題 – Question
次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈ほそながい切符さしだすきみの手に【 ① 】のようなあかるさをみる〉 (野口あや子)
A. 気泡
B. 鉄路
C. 菌糸
D. 銅貨
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解答 – Answer
C. 菌糸
解説
ほそながい切符さしだすきみの手に菌糸のようなあかるさをみる
掲出歌は、野口あや子の第四歌集『眠れる海』の連作「とかげ」に収められた一首です。
菌糸とは、菌類の体を構成する糸状の構造のことです。
「ほそながい切符」をきみが差し出したとき、その手に「菌糸のようなあかるさ」を見たという一首です。
菌糸はとても小さいもので、目に見えません。ですから菌糸が明るいのかどうなのかはわからないのが一般的でしょう。しかし、この歌では「菌糸のようなあかるさ」というように、菌糸は明るいものとして捉えられています。
もちろん顕微鏡などで拡大された菌糸の画像を見る場合、その背景は明るく、菌糸自体も透き通るような明るさをもっていることがわかります。ただしそれは菌糸自体の明るさではなく、観察の過程で得られた明るさだと思います。
しかし掲出歌の世界では「菌糸」は明るいものとされ、それはその世界において正しいことなのでしょう。そして「菌糸のようなあかるさ」をきみの手に見るというところが魅力的で惹かれます。
ただの明るさではなく「菌糸のようなあかるさ」。菌糸の細長さが「ほそながい切符」と呼応し、また粘性を想起させる明るさが、きみとの関係におけるつながりのようなものも感じさせてくれます。
「菌糸」という言葉がもつイメージが活きている一首だと思います。