次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈こんなにも【 ① 】を背負いこまされて歌集の歌はしんどいやろう〉 (吉岡太朗)
A. 世界
B. 余白
C. 貨幣
D. 言葉
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B. 余白
こんなにも余白を背負いこまされて歌集の歌はしんどいやろう
掲出歌は、吉岡太朗の第二歌集『世界樹の素描』の連作「その青が」に収められた一首です。
歌集というものは、多くの場合一頁当たりに一首~三首程度が掲載されています。
小説やビジネス書のように、文章がたくさん載っているわけではありません。一頁に印刷されている文字数は当然少なく、文字数が少ないということはすなわち余白が多いということです。
短歌をはじめとする詩歌は余白を含めて味わう部分が少なからずあるでしょう。ですから、歌集において一頁に何首載せるのか、文字の大きさをどのようにするのか、改行するのか、どの位置に歌を載せるのか、余白はどれくらい確保するのかは重要な要素です。
掲出歌ではその「余白」を詠っていますが、歌が「余白を背負いこまされて」と捉えているのです。
余白は歌にとって必要なもので、むしろプラスに働くものというイメージがありましたので、「背負いこまされて」いるという捉え方がとても新鮮に映りました。歌と余白はフラットな関係ではなく、歌が余白を背負っている、その関係性によって「歌はしんどいやろう」というのです。
それほど短歌というものは、歌集のレイアウトにおいて注目される存在ということでしょう。余白があればあるほど、そのページに掲載された歌に重みが増していくのかもしれません。
余白の多いページに置かれた歌は、その重みに耐えうるだけの強度をもった歌なのか、生半可な歌ではその重みに耐えられないのではないか、そのようなことを考えさせられる一首です。