次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈暗い顔してどうしたんアメリカンドッグを【 ① 】みたいに渡す〉 (岡野大嗣)
A. 脚光
B. 夕焼け
C. 灯台
D. たいまつ
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D. たいまつ
暗い顔してどうしたんアメリカンドッグをたいまつみたいに渡す
掲出歌は、岡野大嗣の第三歌集『音楽』の連作「ディスタンス1」に収められた一首です。
友人か恋人かわかりませんが、相手が暗い顔をしているのに気づいて「どうしたん」と気遣った場面です。
そのときに手渡したものは「アメリカンドッグ」。棒の部分をもって相手に渡したのでしょう。それはまるで「たいまつ」のように渡したというのです。
手渡したのが本当の「たいまつ」だったら、暗い顔を照らすことができたでしょう。しかし実際に渡したのはアメリカンドッグです。アメリカンドッグでは相手の顔は照らせません。
しかし、暗い顔を明るい顔に変えるには、何も火や照明のようなものが必要なわけではないのです。アメリカンドッグが相手にとってどれくらい暗さを取り除けるものであったかはわかりませんが、渡す側は「たいまつみたいに渡す」ことで、少なくとも相手の暗い顔をわずかでも明るくしたいという思いが込められているように感じます。
捉え方によっては、相手への思いやりのような気持ちはないとする見方もあるでしょうが、それよりも相手への思いやりがあると好意的に捉えた方が歌が生きてくるように思います。
「たいまつみたいに」渡した結果、相手がどう受け取るかよりも、まずはこちら側から「暗い顔」を解消しようとして渡したということが大切なことであると伝えてくれています。
アメリカンドッグという食べ物ひとつを渡す行為から、相手との距離、相手への思いやりなどが垣間見える一首だと思います。