問題 – Question
次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈圏外にゐるが嬉しく沢の水汲みては秋の【 ① 】を見る〉 (黒瀬珂瀾)
A. 関節
B. 始まり
C. 触角
D. 透明度
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解答 – Answer
D. 透明度
解説
圏外にゐるが嬉しく沢の水汲みては秋の透明度を見る
掲出歌は、黒瀬珂瀾の第四歌集『ひかりの針がうたふ』の連作「秋のみぎはに」に収められた一首です。
一人一台、あるいは一人で複数台スマホをもつ時代となりました。このような現代においては、常に電波の届く「圏内」にいる状態が当たり前になっています。
この歌は、そのようなスマホの電波が届くエリアから離れた場所で詠まれた歌です。
常に圏内にいるような日々においては、一度圏外に移ると圏外という状況が新鮮に感じられ、主体は「嬉しく」思っているのです。
場面は秋の沢であり、沢の水を汲んでいるところです。汲んだ水は透き通っていてそれを眺めていますが、その透き通りようはまさに「秋の透明度」というべき、とても澄んだ状態です。
「水」の透明度ではなく「秋」の透明度であることが、この一首を一首たらしめているでしょう。
都会の喧騒から離れ、IT・インターネットから離れ、自然の中で秋と向き合うとき、そこには全身で感じる秋の豊かさがあることを教えてくれる一首だと思います。