問題 – Question
次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈飛んでいく麦わら帽子いつだって【 ① 】が心を照らしだすから〉 (北山あさひ)
A. 遠さ
B. 暑さ
C. 速さ
D. 薄さ
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解答 – Answer
A. 遠さ
解説
飛んでいく麦わら帽子いつだって遠さが心を照らしだすから
掲出歌は、北山あさひの第一歌集『崖にて』の連作「風家族」に収められた一首です。
突然の風で自分の麦わら帽子が遠くに飛ばされていったとき、あるいは誰かの麦わら帽子が飛ばされていく光景を目にしたとき、ふと心について思いを巡らした歌だと思います。
「心を照らしだす」のは「遠さ」だと詠われています。しかも「いつだって」なのです。
「遠さ」というだけでは漠然とした印象がありますが、それは距離としての遠さでもあり、時間としての遠さ(たとえば現在からどれだけ離れているか)でもあり、あるいは心理的な遠さでもあるのかもしれません。遠さが限定されずはっきりとしないところも、この歌での「遠さ」を表すのにかえって効果的といえるでしょう。
複数の意味合いを帯びた「遠さ」が生まれることで、心が照らしだされていくのです。近い状況からは見えなかった「心」が、「遠さ」により輪郭をもちはじめるといったことかもしれません。
逆にいえば、遠さが生まれなければ心ははっきりと捉えることはできないということでしょう。そのようにしか照らしだされない心とはどのような心なのか、とにかくいろいろと考えさせられます。
麦わら帽子が遠く飛ばされていく景が印象に残り、読んだあと少し切ない気持ちになる一首だと感じます。