問題 – Question
〈さみどりの駅に散らばる夏を踏みまっすぐに見るいちめんの青〉という巻頭歌で始まる田中ましろの第一歌集で、ページの所々にQRコードがつけられているのが特徴的なのは何?
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解答 – Answer
『かたすみさがし』
解説
『かたすみさがし』は2013年(平成25年)に出版された、田中ましろの第一歌集です。新鋭短歌シリーズ(No.8)として書肆侃侃房から刊行されました。
まず本歌集の特徴ですが、ページにQRコードがつけられており、読み取ることでウェブサイトにつながる仕掛けになっています。本とWebをリンクさせる試みですが、QRコード入りの歌集というのは大変珍しいと思います。
また著者は、短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」を発行していますが、短歌は文字だけの世界ではなく、他分野(写真やWebなど)とのリンクを常に意識しているのではないかと思います。
そのような経緯もあり、本歌集の歌を読むと非常に映像的な歌に目がとまります。
一首を読んだ後、具体物が色彩を伴って鮮やかな景をもたらしてくれる、そんな印象を受けます。それはそのときだけの光景かもしれませんが、写真のようにずっとその場面が記憶に残り続けるような感じであり、そのように感じる歌が魅力的な一冊だと思います。
『かたすみさがし』から五首
待つことは待たせることか海までの坂にだれかの蜜柑は朽ちて
ていねいに生きてください姿煮の骨はしゅくしゅく皿にならべて
ストライク投げても受け止めないくせにミットかまえて「恋」なんて言う
3階の窓から空に向け飛ばす輪ゴム 神さま僕はここだよ
手を振ったあとに出くわす夕暮れに肯定されて立つ交叉点