次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈どこがサビなんだかわからない曲を【 ① 】の軽さみたいにすきだ〉 (岡野大嗣)
A. 言葉
B. リュック
C. アルミ
D. バター
B. リュック
どこがサビなんだかわからない曲をリュックの軽さみたいにすきだ
掲出歌は、岡野大嗣の第二歌集『たやすみなさい』の連作「海岸線のギターフレット」に収められた一首です。
サビがわからない曲というのは、のっぺりとした起伏のない曲を指しているのでしょうか。それとも曲の最初から最後までが、ずっとサビのような勢いがあり、結果としてサビがどこかわからない曲なのかもしれません。
とにかく、一般的に想像するようなメロディーがあってサビがあってというものではない曲を指しています。そしてそんな曲を「すきだ」といっているのです。
この歌のポイントは「リュックの軽さみたいに」というところです。この表現があるからこそ、一首として成立しているといえるでしょう。
リュックは本来荷物を詰め込むことができるようなつくりになっています。リュックの容量いっぱいに詰めることもできますし、少ししか荷物を入れず運ぶことも可能です。
「リュックの軽さ」というとき、リュックの中身はほとんど何も入っていない状態だと思います。荷物がほとんどないリュックを背負ったときに感じる「軽さ」に対する心地よさというのは、なかなか他の行動では味わえない部類の心地よさなのではないでしょうか。
いくら軽いリュックといえども、何も背負わない状態に比べれば重さはあるわけです。しかし、リュックを背負わなければ、改めて軽いという思いも生まれてこないでしょう。
この歌では、リュックの軽さの心地よさと、サビがどこかわからない曲の好き度合いとが紐づけられています。いいかえれば、リュックの軽さという具体的な場面が「すき」という感情に輪郭を与えています。リュックの軽さという、多くの人が感じたことがあるけれども見過ごしてしまっている気持ちを見事にすくいあげた一首だと感じます。