次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈【 ① 】を一人で食べきった強い気持ちが叶えた夢だ〉 (工藤吉生)
A. 近江牛ステーキ
B. 寄せ鍋のふたつ
C. 3個入りプリン
D. イタリアンコース
C. 3個入りプリン
3個入りプリンを一人で食べきった強い気持ちが叶えた夢だ
掲出歌は、工藤吉生の第一歌集『世界で一番すばらしい俺』の連作「眠り男」に収められた一首です。
夢を叶えるために必要なものは何でしょうか。
幸運、お金、タイミングなどいろいろあるとは思いますが、中でも重要なものは「気持ち」だと思います。夢を叶えるという気持ちが強ければ強いほど、夢が叶う可能性は高まるのではないでしょうか。
掲出歌も「強い気持ちが叶えた夢」と詠われています。強い気持ちによって夢が叶うということですが、上句がなんとも興味深く、「3個入りプリンを一人で食べきった」というのです。
3個入りプリンや3個入りヨーグルトなどは店頭でよく見かけます。3個入りや4個入りは大抵は家族用であったり、みんなで食べるときに便利です。
しかしこの歌ではおそらく3個入りプリンを一度に食べきったということなのだと思います。何日にもわたって食べたというよりも、一度に食べたほうが「食べきった」感が表れると感じます。
この歌は大きく二通りに読めると思います。それは句切れをどこに置くかで変わってきます。三句で切れると思うか、句切れなしと見るかで意味が変わってくるでしょう。
三句で切れるとみれば、ここで登場する「夢」は「3個入りプリンを一人で食べきった」ことそのものになります。なにがしかの「強い気持ち」があって、その強い気持ちが3個入りプリンを食べきらせたという意味です。
もう一つは句切れなしで読む場合で、この場合は「強い気持ち」に「3個入りプリンを一人で食べきった」が掛かってきます。つまり3個入りプリンを一人で食べきったということそのものが「強い気持ち」であり、その強い気持ちをもって、なにがしかの「夢」を叶えたというふうに読めると思います。
初読では、後者の句切れなしで捉えていましたが、繰り返し読むうちにここに登場する「夢」は「3個入りプリンを一人で食べきった」という、他者から見ればあまり羨ましがられないようなものであると捉えたほうが、この歌の味わいが出るのではないかというふうに感じるようになりました。
いずれにしても、3個入りプリンを一人で食べきるという非常に微妙な行為に対して達成感を感じていると詠われているところが眼目になっている一首だと感じます。