問題 – Question
〈ああまただまたはじまったとばかりに映像を観るただの映像〉という巻頭歌で始まる、松木秀の第一歌集は何?
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解答 – Answer
『5メートルほどの果てしなさ』
解説
『5メートルほどの果てしなさ』は2005年(平成17年)に出版された、松木秀の第一歌集です。1997年から2003年までの作品312首が収められています。
松木秀は短歌を始める前に川柳を始めているところから、短歌においても風刺的な詠ひぶりが特徴となっています。
歌集一冊を通して読めばなおその傾向があることがわかるでしょう。
物事を見るときの切り口がとても鋭いのです。他の人がなかなか気づきにくいところを、短歌という形式を使って、うまく読者に気づかせてくれるのです。
ですから、本歌集を読むと新たな発見をした感覚を何度も味わうことができます。そしてそれは発見を知った喜びに留まらず、そこから生きることについて考えさせられる、そんな思いに誘導されていく印象があります。
それは著者の物事を見るとき切り口が、表面的なものではなく、何かしら「生」と「死」に関する部分に触れているからなのだと感じます。
思い詰めて深刻に向き合う必要はありませんが、風刺的な文体の中にふとそのようなことを感じる瞬間も、本歌集を読む楽しみのひとつといえるでしょう。
2006年、本歌集により第50回現代歌人協会賞受賞。
『5メートルほどの果てしなさ』から五首
日本に二千五百の火葬場はありてひたすら遺伝子を焼く
踏み締める一歩一歩よこの僕に何はなくとも重力はある
核発射ボタンをだれも見たことはないが誰しも赤色とおもう
儀式とは呼べないまでも地球儀を運ぶとき皆丁寧となる
物質がはかなさという構造をとるつかのまを生命という