問題 – Question
次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈雨の午後ソファーで寝てゐし不完全死体のわれは起きて【 ① 】〉 (栗木京子)
A. 湯に入る
B. 二度寝す
C. 思考す
D. 米研ぐ
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解答 – Answer
D. 米研ぐ
解説
雨の午後ソファーで寝てゐし不完全死体のわれは起きて米研ぐ
掲出歌は、栗木京子の第六歌集『けむり水晶』の連作「月となるまで」に収められた一首です。
外は雨。何となくけだるさを感じる午後にソファーで寝ていて、起きたら夕方近くになっていたのでしょう。夕飯の準備をするために、米を研いだ場面です。
この一首のポイントは何といっても、「われ」を「不完全死体」といったところです。不完全死体はその通り、完全な死体ではなく、死体になりそこなった体といった意味合いを感じます。一応体は動くのですが、起き抜けの体、特に布団ではなくソファーのような昼寝や仮寝といった状態から起きると、どうも頭も体もぼぉーとしていることがありますが、それをよく表しています。
自身を客観的に見つめる目が冷静でかつユーモアにあふれています。
「不完全死体のわれ」が起きてすぐに米を研ぎ始めたというところに、思考や感情は奥に影を潜ませ、習慣の成せるところ、体だけが勝手に動き始めている様を的確に捉えています。
寝て起きる、お米を研ぐというごくありふれた場面が印象深い短歌になることをこの一首は教えてくれます。