問題 – Question
〈いつぴきのわれ四匹の亀を飼ふ オーディン、トール、フレイヤにロキ〉という巻頭歌で始まる、坂井修一の第七歌集は何?
答えを表示する
解答 – Answer
『望楼の春』
解説
『望楼の春』は2009年(平成21年)に出版された坂井修一の第七歌集です。47歳から50歳までに詠まれた400首余りが収録されています。
大学に勤務する著者は情報工学を専門としていますが、情報工学と短歌という両面から、あるいはその融合点から時代を見つめ、その考えが歌に滲み出ています。
あとがきで次のように述べています。
「望楼」とは物見の櫓。集中の連作では、東大の大講堂(安田講堂)をこれに見立てた。大学というものは、時代を見据え、新しい時代を切りひらく器として機能しつづけなければならない。科学技術を生み育む器という点で今の大学はかつてより恵まれているが、思想や文化の器としてはどうだろうか。
あとがき
自分自身の置かれた立場、状況、年齢、経歴、環境、時代など、それらと自分自身とをつなぎ、自由自在な歌いぶりが印象に残ります。聞きなれない言葉や難解な言葉も登場しますが、それさえも本歌集の味わいです。
2010年、本歌集にて第44回迢空賞受賞。
『望楼の春』より五首
ズボンから胴体がでて足がでてポケットにふたつ手が残されぬ
王は千日くるしみしかなその墓とともに千年くるしみし民
能吏だけ生きてもよいといふがごとけふありき皆ほほゑみながら
地球まるごとポートフォリオとならむともわれはたのしむうたうたふわれ
望楼かお化け屋敷か問はざれど大講堂の時計はまはる