問題 – Question
〈春風のなかの鳩らが呟けりサリンジャーは死んでしまった〉という巻頭歌で始まる、小島なおの第二歌集は何?
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解答 – Answer
『サリンジャーは死んでしまった』
解説
『サリンジャーは死んでしまった』は2011年(平成23年)に出版された小島なおの第二歌集です。20~24歳までの作品307首が収録されています。
就職、恋愛、家族など、日常の出来事を背景とした歌が詠われていますが、それらはただ単に日常の報告に終わりません。一首一首が感情をもち、短歌の魅力を伝える歌の数々となっています。
また宇宙や動植物が多く登場しますが、それらと自分とを引きつけ通路を開くことで、スケールの大きな、外に拓けていくような歌になっており、そのような歌に特徴が出ていて印象に残ります。その中から伝わってくる思いに、ストレートさと強さとを感じます。
『サリンジャーは死んでしまった』より五首
わたくしも子を産めるのと天蓋をゆたかに開くグランドピアノ
無人なるエレベーターの開くとき誰のものでもない光あり
きみとの恋終わりプールに泳ぎおり十メートル地点で悲しみがくる
しんしんと陽炎のなかの昼の駅白犀のような夏をあなたに
きみの手を摑んで駆けるこのときをぎしぎしと樫の木が立ちあがる