問題 – Question
次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈わが目より涙ながれて居たりけり【 ① 】は悲しきものを〉 (斎藤茂吉)
A. 猫のひたひ
B. 鶴のあたま
C. 鷺のうなじ
D. 象のきびす
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解答 – Answer
B. 鶴のあたま
解説
わが目より涙ながれて居たりけり鶴のあたまは悲しきものを
掲出歌は、斎藤茂吉の第一歌集『赤光』の連作「冬来 黄涙余録の二」に収められた一首です。
動物園で鶴を見たときの歌ですが、この一連から背景には狂者の自殺があったことがうかがわれます。精神科医でもあった斎藤茂吉は、狂者を見守る立場にありました。
精神病者の自殺を通して、命とは何か、生きるとは何か、そして自分とは何かを考え続けていたのかもしれません。その思いが「鶴のあたま」を見ている場面で、涙が流れている状況につながっていったのでしょう。
同じ一連には次の歌も詠まれています。
くれなゐの鶴のあたまを見るゆゑに狂人守をかなしみにけり
この歌にも「鶴のあたま」が登場します。精神科医であった自らを「狂人守」と呼ぶところには、複雑な思いがあったのでしょう。現在では差別語とされる「狂人」「狂人守」という言葉ではありますが、斎藤茂吉は精神病患者の立場を思いながら、これらの言葉を歌に詠んだのではないでしょうか。
鶴の頭の赤い色が、いつまでも心の奥に残り続けるように感じる一首です。