問題 – Question
〈ああ檸檬やさしくナイフあてるたび飛沫けり酸ゆき線香花火〉という巻頭歌で始まる、山田航の第一歌集は何?
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解答 – Answer
『さよならバグ・チルドレン』
解説
『さよならバグ・チルドレン』は2012年(平成24年)に出版された、山田航の第一歌集です。
第55回角川短歌賞を受賞した連作「夏の曲馬団」が冒頭に置かれています。
歌は一首一首に見どころやポイントが織り込まれており、読み手としてはじっくりと歌を楽しむことができます。全体としては、明るさのイメージがあります。もちろん中には青年期のどうしようもない感情というものも出てくるのですが、そのような場合でもどこか前向きな印象を受けるのです。歌から感じる諦めのような思いも、後ろ向きの諦めではなく、どこか前向きの諦めとでもいうべきすがすがしさを感じるのです。
歌集冒頭には「スタートラインに立てない全ての人たちのために―」と書かれています。この歌集が誰かにとってのスタートラインに立つきっかけになればというのが、著者の望みのひとつでしょう。スタートラインに立っていないと感じる人にとって、より心に響く歌集なのではないでしょうか。
2013年、本歌集にて第57回現代歌人協会賞受賞。
『さよならバグ・チルドレン』から五首
やや距離をおいて笑へば「君」といふ二人称から青葉のかをり
青空に浮かぶ無数のビー玉のひとつひとつに地軸あるべし
鉄道で自殺するにも改札を通る切符の代金は要る
たぶん親の収入超せない僕たちがペットボトルを補充してゆく
粉雪のひとつひとつが魚へと変はる濡れたる睫毛のうへで