問題 – Question
〈古書店に軒を借りれば始祖鳥の羽音のような雨のしずけさ〉という巻頭歌で始まる、柳澤美晴の第一歌集は何?
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解答 – Answer
『一匙の海』
解説
『一匙の海』は2011年(平成23年)に出版された、柳澤美晴の第一歌集です。2006年から2010年、27歳から31歳の作品310首を収めています。
第19回歌壇賞受賞作「硝子のモビール」を含んでいますが、そのほかにも第49回短歌研究新人賞次席作品、結社賞である未来賞を受賞した作品など、一定の評価を受けた作品がこの一冊に収録されています。
理数的な題材を歌に組み込み歌の骨格をつくりあげる巧さを感じます。しかし、そのような歌よりもむしろ北海道の風土を背景とした歌や学校の場面を詠んだ歌、また家族を詠んだ歌など、巧さはありつつも技巧が最前面には出ていない歌にも味わいを感じます。
2012年、本歌集にて第56回現代歌人協会賞受賞。
『一匙の海』から五首
蟬の翅重ねたような日暮れどき逢いたきひとを影が連れくる
心臓が硝子の箱におさまっている感覚が消えない ずっと
剖かれる白鳥として一本の道受け入れし故郷見下ろす
日焼けした父の背中に軟膏の綿雲を置く母のゆびさき
コピー機のひかりさみどり官能は言葉刷られる前に潜みき