問題 – Question
〈暫くは続くであらう辛き日のはじめの鍋で水を焼きゐつ〉という巻頭歌で始まる、紙媒体を伴わず電子書籍としてKindleにおいてのみ出版された光森裕樹の第二歌集は何?
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解答 – Answer
『うづまき管だより』
解説
『うづまき管だより』は2012年(平成24年)に出版された、光森裕樹の第二歌集です。2010年から2012年まで30代前半の128首が収められています。
本という紙媒体の体裁を採らず、Amazon Kindleにおいてのみ電子書籍というかたちで出版されたところが特徴的でした。
歌集出版というと一般的には本という紙出版のイメージがありますが、電子のみのでの出版は、システム関係の仕事の経験がある著者ならではといえるかもしれません。現在では紙と電子と両方で出版されるケースは増えてきていますが、電子のみでの出版というのは当時珍しいことでした。
発見とひとことで片付けてしまうのは少し違いますが、本歌集に出てくる歌を読むと、新たな視点やものの見方に気づかされるというところがあります。それは「理」であるのでしょうが、ただの理で終わらず、読後感のよい抒情を感じさせてくれるのです。
収録歌数は少なめですが、言葉の選び方、語順、助詞の使い方などによってリズム感もよく、ひとつひとつが心地よく響く歌にあふれていると感じます。
『うづまき管だより』から五首
めぐすりをみぎめひだりめつかひわく 夏来たりなばもうひとつ来よ
窓の外に映るランプがほんたうであるかもしれず確かめにゆく
あなたがやめた多くを続けてゐる僕が何ももたずに海にきました
エレベーターにちらばつてゐるはなびらを浮かせるために押す地上階
はなどきを吾は地球の裏側が移るはやさにあゆみはじめる