問題 – Question
〈淡雪にいたくしづもるわが家近く御所といふふかきふかき闇あり〉という巻頭歌で始まる、林和清の第一歌集は何?
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解答 – Answer
『ゆるがるれ』
解説
『ゆるがるれ』は1991年(平成3年)に出版された、林和清の第一歌集です。20代後半の作品を中心に収めています。
歌集名は『梁塵秘抄』に登場する歌詞の中から取られています。
著者は京都出身であり、御所、叡山、都ホテル、深泥池など京都ゆかりの地を題材にした歌が多く見られ、巻頭歌はまさにそれを象徴する一首です。
全体を通して「死」というモチーフを強く感じますが、師・塚本邦雄からの影響もあるでしょう。和歌や短歌に対する深い造詣が織りなす歌はすべてはっきりとした像を結べるわけではありませんが、想像力を刺激され、言葉の選択から生まれるリズム感にも惹き込まれる、そんな一冊だと感じます。
1992年、本歌集にて第18回現代歌人集会賞受賞。
『ゆるがるれ』から五首
父子といふあやしき我等ふたり居て焼酎酌むそのつめたき酔ひ
行かずとも見む水無月の青ナイル瑞瑞とをのこらがかちわたる
十で神童十九で逢魔そののちの残んの夏のさるすべりかな
父は父を恕さず あまりに空澄みて帰雁の一羽撃ちおとさるる
海の果てへその血はこぶを鳥と呼びこごゆるまでを見送りゆかな